
上記画像は生成AIが作成しています。
「新しい人よ、目覚めよ」*大江健三郎作の小説[新しい人よ目覚めよ]からの引用
皆さんも同じような経験をしたことがあるのではないでしょうか?
それは施設や学校、また在宅などでの夕方の風景、つまり患者や利用者たちがそれぞれの自宅へ帰ってゆく光景です。
一日の終わりの別れ際や病気の治療が終わって退院する時などに利用者や患者を見送ることがあります。
「元気になってよかったですね」や「また明日ね」という私の言葉に対して、彼ら彼女らが笑顔で「ありがとう」や「また明日ね」と言ってくれる。
そして、手を振りながら背中を向けて去ってゆく。
どんなに困難な一日や長く続いた治療だったとしても、『この仕事をしていてよかった』と思える瞬間です。
このような場面は、実際に従事した人、現場の内側にいる人だけの実感でもあり、一種の患者や利用者からの私たちへのプレゼントでもあります。
この満足感は支援者にとってかけがえのない瞬間ではありますが 、その背後に大きな“落とし穴”があることに、どれほどの人が気づいているでしょうか。
その落とし穴とは「それは医療や・介護、障害者福祉を内側から眺めているに過ぎない」という視点です。
物事は常に多面的です。内側からの視点による風景と、外側から見える風景は、必ずしも一致するとは限りません。
例えば、地球が青い色をした星であることを初めて発見したのは、ガガーリンという宇宙飛行士でしたが、彼がなぜ地球は青いと気付いたのか?
それは、彼が世界で初めて地球を外側から見る経験をしたからです。
支援とは何か?寄り添うとは何か?人権とは何か?
これらの概念は私たちの仕事の中心にある思想ですが、その全貌を知るためには、内側の視点と同時に外からの視点を知る必要があります。
内と外、その両方をみることこそ、その本質に迫ることができるようになるのではないでしょうか。
では、私たちが属する医療・介護・障害者福祉・特別支援教育などの世界を外側から見るとはどういうことでしょうか?
私が提案したいのは、国連が2022年に公表した、障害者権利条約の履行状況を調査した報告書、いわゆる総括所見という文書です。
これは、日本が障害者権利条約を批准してから初めて行われた実態調査のようなもので、障害者権利条約の趣旨に反すると認定された事項、
つまり日本が改善すべき点について、勧告という形式で書かれています。
そしてそこには内側からしか見ていなかったいわゆる「中の人」には驚愕の内容が書かれています。
しかし、これが、日本の医療・介護、障害者政策、制度全般を、外側からの視点、つまり世界は日本をどう見ているのか?が書かれているのです。
私たちのコミュニティは、この総括所見を“外からの視点”として大切に受けとめ、
それを共に知り、共に理解し、そして実践するためには何が必要かを、皆さんと一緒に考えていきたい。
そのような関係性を育む場でありたいと願っています。
また、すでにこれらのことを知り、現場で実践する、または実践を模索する人もいらっしゃるでしょう。
私自身もその一人ですが、学べば学ぶほど、内側の世界との乖離を実感し、実践の難しさに苦しんだり悲しんだりすることになるのではないでしょうか?
私たちは、そのような孤独に苦しんでいる支援者と共に、寄り添い、応援し、共に取り組むネットワークでありたいと願っているのです。
利用者の人権を最優先に据え、“支援の当たり前”を問い直し、葛藤しながらも変革を模索する人たち。
私たちは、そのような存在を“新しい人”と呼びたいのです。
「新しい人よ、目覚めよ」 ― そして、私たちはその“新しい人”と共に歩む場です。
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